戦争のあとの不安、不眠、いらだち:どこまでが正常な反応で、どこからが助けを求めるきっかけか
非常事態を経験した人のほぼ全員が心理的な苦痛を感じる。ふつうは時間とともに和らぐが、一部の人では障害に移行する。両者をどう見分けるかを、WHOと米国のNational Center for PTSDのデータから整理する。

- 危機のあとの悲しみ、不安、睡眠の問題、疲労、いらだちはよくある反応で、ふつう時間とともに和らぐ。
- 症状が1か月を超えて続く、ひどくつらい、または日常生活に支障がある場合は、医師か心理士に相談するとよい。
- 身近な人の支え、心理的応急処置、エビデンスに基づく心理的介入が助けになる。
異常な出来事への正常な反応
WHOによれば、非常事態の影響を受けた人のほぼ全員が心理的な苦痛を経験し、それはふつう時間とともに和らぐ。よくみられる症状は、悲しみ、絶望感、不安、睡眠の問題、疲労、いらだち、怒り、体の痛みである。一部の人は、うつ病やPTSDのような治療が必要な状態に至る。
WHOは次のような推計を示している。過去10年間に戦争や紛争を経験した人のうち、うつ病、不安症、PTSD、双極性障害、統合失調症のいずれかがみられるのは 22%である。13%では軽度、9%では中等度から重度の状態にある。
PTSDの現れ方
米国退役軍人省のNational Center for PTSDは症状を4つのグループに分けており、診断にはそれぞれのグループの症状が必要である。
- 出来事の再体験(侵入的な記憶、悪夢)。
- 出来事を思い出させるものを避ける。
- 出来事の前より否定的な思考や感情が増える。
- 常に緊張し、警戒している(「張りつめた」状態)。
症状はふつう出来事の直後に始まるが、数か月、あるいは数年後に現れることもあり、出たり消えたりする場合もある。大半の人は数週間のうちに楽になり始め、ストレス反応は自然に治まることが多い。
専門家に相談すべきとき
National Center for PTSDは、症状が1か月を超えて続く、ひどくつらい、または日常生活に支障をきたす場合は、医師またはメンタルヘルスの専門家に相談するよう勧めている。PTSDの診断を下せるのはメンタルヘルスの専門家だけである。恥ずかしいことではない。経験したことのあとで助けが必要になるのは、ごく自然なことである。
WHOの勧告で役立つとされること
- 地域の支えとセルフヘルプ: 身近な人との会話、人とのつながり。
- 心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド): 急性の苦痛の中にいる人への、訓練を受けた支援者による心理面・実務面の支え。
- エビデンスに基づく心理的介入 長引く苦痛に対して、専門家、または監督を受ける訓練済みの地域の支援者が行う。
- 医療機関での臨床ケア 優先度の高い状態を対象とする。
ウクライナで助けを求められる窓口
- 7333 — 「Lifeline Ukraine」。24時間対応、無料・匿名で、自殺予防とメンタルヘルスの支援を行う。
- 0 800 100 102 — 全国心理学協会の電話相談。毎日10:00〜20:00。
- 0 800 33 20 29 — ウクライナ退役軍人基金の危機対応窓口。24時間対応。
番号は、閣僚会議が公開している「Ty yak?」(「大丈夫?」)プログラムのページ(2023年6月)から取ったものである。連絡する前に、現在も有効かどうかを確認してほしい。自殺を考えている場合や差し迫った危険がある場合は、103または112に電話すること。
出典
- WHO:Mental health in emergencies(2025年5月6日)
- National Center for PTSD(米国):PTSD basics
- 政府プログラム「Ty yak?」:助けを求める窓口
本記事は情報提供を目的としており、医師や心理士の診察・相談に代わるものではない。自己判断による治療は健康を害するおそれがある。